合気道小林道場 Aikido Kobayashi Dojo

その12 平成12年10月

 今年も春から夏にかけて、合気道小林道場から私をはじめ各師範・指導部員が、フィンランド、スウェーデン、ドイツ、アメリカ、カナダ、ハンガリー、イギリス、イラン、韓国、台湾へ合宿に指導に行って来ました。各国とも合宿に参加する人々が年々増え続けており、合気道が日本で思っている以上に発展している様子がうかがい知れます。

 各国で行われるこのような合宿は、日本の合宿と同じですが、日本では考えられないくらい積極的に大勢の人たちが参加します。彼らは日頃は各道場で稽古していますが、合宿で日本から来た先生に学ぶ事によって自分たちの技の向上と、道場間の交流の場であると合宿を位置づけています。特に組織によっては、年何回か行われる合宿が審査の場で有ることが多く、その点でも皆熱心に参加します。つまり、いくら自分の道場だけで熱心に稽古していていても昇段はできません。また、合宿の参加回数も、昇級・昇段資格条件に入っている場合も結構あります。

 各国でこの様な合宿は毎年行われていますが、国によってその行い方や雰囲気が微妙に違いますので、フィンランドとアメリカを例に取って書いてみたいと思います。

 フィンランドも含めてヨーロッパでは夏の休暇が3〜4週間位あります。従って合宿期間も一週間〜十日が基本です。また、他の国と国境を接しており、フィンランド国内のみならず近隣のスウェーデン、エストニア、リトアニア、ウクライナ、ロシア、ポーランド、ノルウェー、デンマークなどからも多くの人達が参加します。参加者の3割は女性会員です。会場は学校を使用します。宿泊場所は教室で寝袋を使用し、男女雑魚寝が普通です。お金のある人はホテルに泊まり、食事は各自がそれぞれ摂ります。

 稽古は一時間半の稽古が一日に3〜4回あり、全員合同のクラス、一級以上のみ参加できるクラス、二級以下の参加できるクラスに別れ、みんな平等に稽古できる様に組み合わせています。全日程を参加するのは5割前後です。後は自分の都合で日程を決め参加しています。

 アメリカは国内で時差が4時間もある広い国です。小林道場と交流のある豊田文夫師範の組織AAA(アイキドウ アソシエイション オブ アメリカ)は中心道場がシカゴにあります。地図的にはアメリカの中心部にありますが、広いアメリカに点在する傘下道場の会員をシカゴ一カ所に集めて合宿を行うには、参加者に費用と時間の負担が大きすぎます。そこで、傘下道場の多い地区を選んで開催しています。

 今年の夏の合宿もグリーンボロウ、ロードアイランド、ケノシャの三カ所で行いました。会場は大学を借り全員学生寮に宿泊します。稽古は体育館にマットを敷き、食事は学生食堂でバイキング式になっており、食べ放題とソフトドリンクは飲み放題です。

 合宿は木曜日の夕方集合し、その日の夜2時間の稽古があります。そして、金、土、午前中3時間、午後3時間の一日6時間の稽古が基本です。日曜日は午前中のみの稽古で、午後から審査です。どこの大学も環境は抜群に良く、日本でいえばゴルフ場に建物が点在している様な感じです。

 稽古はクラス分けが無く、私と豊田師範が1時間半ずつ指導しました。ほとんどの合宿参加者が全時間稽古に出ていました。女性は2〜3割です。朝には座禅のクラス(自由参加)があり、指導は会員の中で座禅を修行している人が先生になり、1時間ほど本格的な座禅を30人位で行っておりました。

 合気道を稽古しているから日本の文化に関心があるのか、日本に関心があるから合気道の稽古するのかよく分かりませんが、ヨーロッパ、アメリカを問わず会員の多くは日本の文化に大変興味を持っています。

 今年はアメリカで、将棋を持参してきた人がいたのには驚きました。夜の自由時間や休憩時間に私と3回対局して、何とか私が3勝しました。しかし、彼は暇さえ有れば詰め将棋を一人で練習していたので来年は勝てるかどうか分かりません。

 夜の自由時間などでは、参加者と座談会を行う事もあります。彼らは私が合気道本部道場の内弟子として18年間修行した事を知って、合気道創始者植芝盛平先生に関する質問を良くします。翁先生の逸話や内弟子時代の修業の話しなら良いのですが、翁先生が合気道の説明の中で使われる神道や古事記関する質問にはしばしば絶句する事があります。彼らは色々と本を読んで、とても熱心に勉強しているのには本当に感心します。

 合気道小林道場でも毎年秋の連休に合宿が、千葉県岩井海岸に於いて二泊三日で行われます。今年は10月7日〜9日です。日本では仕事や家庭の事情で、アメリカやヨーロッパの様に長期の合宿は行えません。できるとすれば合気道部の大学生ぐらいです。また、小林道場の合宿でも、5割の人々が一泊二日で、しかも年1回です。

 ヨーロッパ、アメリカは夏とイースター(復活祭)の年2回、大きな合宿があります。その他、週末に各道場単位で行われる講習会は数え切れないほどです。

 このように、各国によって同じ合宿でも微妙に違いますが、ヨーロッパ、アメリカの合宿に対する熱心さと稽古量の豊富さは日本以上です。

 また年数的にみても、合気道小林道場の交流有る海外の道場や組織では、五年前ドイツ合気会が三十周年、3年前ブラジルの鹿内師範の道場が二十周年、アメリカのAAAが二十五周年、今年はカナダのカルガリー合気会が二十周年、フインランド合気会が三十周年を迎えています。来年はスエーデンの弥栄(いやさか)道場が二十五周年、ハンガリー合気道小林道場協会が十周年を迎えます。

 外国の道場もこの様に長期に、且つ熱心に合気道を修行しています。合気道は日本が本家などといえない時代に来ています。合気道小林道場の会員の皆さんも一段の稽古に励んで海外の道場の会員と積極的に交流しましょう。


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