合気道小林道場 Aikido Kobayashi Dojo

平成21年10月

一人でも多くの人に合気道を

あまりご存じではないと思いますが、日本武道協議会という団体があります。柔道、剣道、弓道、相撲、空手道、合気道、少林寺拳法、なぎなた、銃剣道が相互の連絡融和を図り、武道を奨励、その精神を高揚し、健全な国民の育成に努めることを目的に昭和五十二年四月二十三日に発足しました。

この武道九団体の中で唯一試合が無いのが合気道です。合気道は創始者の植芝盛平翁先生が「武は愛なり」と説き「万有愛護の精神」を養うものとされました。もう少し分かりやすい言葉では「真の武道、合気道とは、いたずらに強弱を競い、勝敗を争うようなものではない」「合気道は、不断の稽古での心身鍛練し、人格を陶治するという精神的な要素が大事である」と言う意味です。「正勝、吾勝」と言って正しい事を行い、自分自身の弱さに打ち勝って行く修行という考えから、試合や勝負をする事を禁じ、お互いに「投げ、投げられて」修行していく稽古法方をとっています。

私が合気道の稽古を始めた五十三年前は、武道で試合が無いということがでは理解できない人が武道界には多くいました。合気道を習いたいと来る人は柔道や剣道の道場に入門を希望したが、先生がお前は体力的に無理だと思うから試合の無い合気道を習えといわれました、と来る人が結構いました。それとは別に柔道、空手、剣道を修業しているが、合気道に何かを求めて入門してくる人と両極端でした。私も柔道を修行していましたが合気道に何か別の魅力を感じて入門した一人です。

東京オリンピック後の日本経済の高度成長で欧米に追いつき追い越せの目標に向かって走って来た人達も経済的、時間ゆとりができると健康面に時間を取るようになりました。武道を習いたいがある程度の年齢なので今更勝ち負けの武道は無理だと思う人達が合気道に目を向けてくれる様になり、合気道が注目されだしました。

特に海外では強さをもとめての日本武道ブームが興りましたが、一段落すると合気道は勝ち負けの試合が無く、稽古法も投げ、投げられてお互いに無理なく円く動く自然な動きが「動く禅」だと言われだしました。「武は愛なり」「和合の道」「万有愛護の精神」の教えが非常に高く評価され知識層に浸透していき世界中に広がっています。

相撲の横綱はモンゴル人、三役も半数以上は外国人が占めています。今年9月にオランダで行われた柔道の男子は金メタルが全階級で一つも取れませんでした。剣道も世界選手権で日本が負ける年もあるようです。空手は色々な流派がありますので一口に言えませんが、各大会で外国人が上位を占めています。強さと試合での勝利だけを求める各武道界で日本人の発言権は年ごとに弱くなっています。

合気道の場合は試合がありません。合気道創始者植芝盛平翁先生の植芝家が合気会を組織し創始者の教えを忠実に守り中心となって国内、海外の組織を維持し普及発展させています。しかし盛平翁先生が亡くなって40年、翁先生の教えを直接指導受けた人達も次々と鬼籍に入っています。植芝盛平翁先生の教えをもう一度強く振り返り再確認する必要があると思います。

私は幸いにも植芝盛平翁先生の内弟子として、先生が亡くなるまでの18年間身近で指導を受けました。合気道小林道場では植芝盛平翁先生のこの教えを忠実に守り、国内外に一人でも多くの人達に合気道を伝えて行く努力をして四十年になり、国内では大きな輪を確立する事ができました。今後もその輪を広げようと努力しています。

また海外にも正しい合気道を伝えるために積極的に指導部員を派遣し、正しい合気道の技と理念を日本人から受ける機会の少ない海外修行者にその機会を提供しています。指導員が派遣されている間は、道場には代わりの指導部員や道場の高段位の方に代稽古をお願いしています。皆様には指導の面で多少のご迷惑をお掛けしていますが、海外各国の修行生の為にも御理解頂ければと思います。

そして世界中で一人でも多くの人が合気道を学び、植芝盛平翁先生の「武は愛なり」「和合の道」「万有愛護の精神」を理解して、世界に争いのない平和な社会を実現できればと思います。皆さんのご支援を今後とも宜しくお願い致します。


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