合気道小林道場 Aikido Kobayashi Dojo

その15 平成14年4月

 近年、若者達の暴挙が色々話題になっていおり、枚挙にいとまがありません。中央高速道路の初日の出暴走、成人式会場での暴挙、そして東村山道場のすぐ近くでは、中学生達のホームレス殺人事件が起きました。

 これらの青少年の行動には本当に目を覆いたくなるものがあります。テレビ等で彼等の話を聞いていると、自分達は自分達のやりたい事をやる、他人の迷惑や社会的な規範など全然関係が無いとうそぶいてもいます。話す態度も道徳や倫理、他人に対する思いやりのかけらも感じられません。

 一般の意見では、それを許す家庭が、学校が、社会が悪いで終わっています。勿論一部の人達はこの事を真剣に憂い、その解決に取り組んでいる人達もいます。

 小林道場の中でもその様な活動を行っておられる方がおります。小平道場で長年稽古を続けられた歯科医師・高橋誠一氏は、私財をなげうって東村山市の自宅の庭に30畳の合気道専門道場「錬心館」を開設しました。20年以上に渡って近隣の青少年達に合気道による心身鍛錬、教育実践の場を提供して頂きましたが残念ながら診療所の改築のため、数年前に閉鎖となっておりました。小林道場では2001年1月にその意思を引き継ぎ、東村山市警察署の隣に東村山道場を開設しました。府中街道という大通りの目立つ場所もさることながら、錬心館の方々のご協力により、会員も着実に増えています。

 坂戸道場会員の金子敏行氏は建築会社を経営しておられます。狭山台道場と真鶴道場を建てていただきました。金子氏は、NPO(特定非営利活動法人)「幸せな家庭環境をつくる会」の理事として活躍もしておられます。彼は住宅づくりを通して地域の方々に、子供の教育や家庭環境と子育ての重要性について呼びかけています。

 現在合気道小林道場全体では100以上の道場があります。その殆どの道場では子供クラスを指導しています。多い道場では60〜70人の子供達が稽古をしており、平均すれば一道場あたり25人位になると思います。従って単純に計算しますと2,500人以上の子供達が稽古している事になります。

 私が本部道場で修行していた頃に子供クラスはありませんでした。小平道場開設後、近所の人達が子供に教えて下さい、と稽古人が増えていったのですが、こちらは戸惑うばかりです。大人と同じように指導していても、すぐ飽きてしまったり、おしゃべりをしてみたり・・・。その内、下は4歳から上は小学6年までと年齢も幅広くなり体力もまちまち、人数も15人以上となり更に収拾がつかなくなりました。悩んだ末に気が付いたのが、子供のお母さんやお父さんが道場に連れて来たとき時の最初の一言です。「この子は元気で乱暴なので道場で礼儀を教えて下さい。」「おとなし過ぎるので、活発な子にして下さい。」「肥満なので」「動作が鈍いので」「落ち着きが無い」「内気なので」「身体が弱いので」等です。また、試合があるスポーツは一部の選手中心なので試合のないところが良いと言う人もいました。

 つまり子供達の両親が求めているものは、広い道場で伸び伸びと身体を動し、日本の伝統文化である合気道を通して、挨拶、礼儀、友達との関わり合い、基礎運動能力を高める事だと気付きました。それからは自転車や靴の整理整頓、道場の入退場時の挨拶、一人で道衣を着られる様にズボンの紐、道衣の帯の正確な結び方などをしっかりできる様に指導するようになりました。今の子供達にはマジックテープという便利な物があるので、紐の結び方は以外と難しいようです。小学4年生になっても蝶結びができない子が結構います。そして準備体操や受身も、色々と変化を付けて稽古しています。受身というのは、前や後に転がるだけですが、小林道場では15種類以上のやり方を考えました。

 合気道の技自体も、4歳〜2年生でも理解できる技、中学年でできる技、高学年で稽古する技と理解度に応じて稽古する技を分けています。中学年以上になると剣や杖も稽古します。習熟の度合いは、帯の色で分けて奨励するようにしました。色分けの基本は虹の色です。合気道には試合がないので、子供達には帯の色によって自分の進歩が評価されるので大きな励みになっているようです。年2回の審査で昇級し帯の色が変わりますが、これは技の理解度によって昇級します。

 子供の運動不足が話題になりますが、基礎体力が年々落ちてきているのを長年指導していると感じます。そこで、それを少しでも解消しようと補助運動を多く取り入れました。これも小林道場子供クラスの大きな特徴です。体力を付けるために、楽しみながらできる運動を取り入れて稽古に変化を付けています。小平道場では日曜日は通りに車が少ないので、稽古終了間際には道場の外でランニングも行なっています。

 上記のような工夫で子供クラスの人数も着実に増えています。中学に進学しても稽古を続けている人も多数でており、合気道の底辺の拡大に大きな役割を果たしています。その功績が認められ、1986年には日本武道協議会から表彰を受けました。今までは県や市の連盟に与えられていた賞ですが、個人の団体としては初めての受賞でした。

 これからも、明日を担う立派な子供達が合気道を通じて一人でも多く育つように、努力して行きたいと思います。

 最後にお願いになりますが、18歳以上の有段者・有級者で、子供クラスの指導に興味があり協力して下さる方を男女問わず求めています。時間のある時にお手伝いいただける方、各道場の指導部員までお申しで下さい。宜しくお願い致します。


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