合気道小林道場 Aikido Kobayashi Dojo

その5 平成9年4月

 現在全国学生合気道連盟に加盟している大学の合気道部は104校、各地の師範に直接指導を受けながら活動している分が50校あります。合気道会にとって非常に大きな存在になっています。

 合気道小林道場も明治大学体育会合気道部、埼玉大学合気道部、東京経済大学体育会合気道部、社会福祉大学合気道同好会そして東京学芸大学合気道同好会等が私と指導部の師範の指導の下に活動しています。

 植芝吉祥丸道主著の合気道一路の中に「国内普及の中で私が独自に推進したものは大学合気道部の設置がありました。昭和29年(1954)時点で日本中の大学に合気道部は一つもありませんでした...」と書かれています。

 私が本部道場で合気道を始めたのが1955年4月で、大学入学と同時です。当時合気道はほとんど世間には知られておりません。植芝吉祥丸道主が、本部道場に稽古に来ている大学生に、各自の母校に合気道部の結成を強く呼びかけられました。また、道主はあらゆるつてを回り、各大学で合気道の説明演武会を行いました。私も道主と同行させていただき演武の受けをとりました。

 その御苦労を肌で感じ、道主の御協力を受け、昭和32年私の母校明治大学に合気道同好会を結成しました。前後して数年の内に、早稲田、慶応、法政、日大、学習院、東京経済大、國學院等数多くの大学に合気道部が創立されました。その影響が地方の師範にも及び全国各地の大学の合気道部の設立につながりました。

 現在と違い、当時大学に同好会一つ創るのにも大変な努力がいりました。校内にポスターの掲示をしたり、道場の借用の許可を受けるだけでも学生課や体育科に何度も足を運び頭を下げ許可を受けなければ成りませんでした。以前から使用している柔道、剣道、空手部の使用していない時間、早朝、昼休み、夜遅くの時間帯で学生が非常に集まりにくい時間のみでした。

 1961年には関東学生合気道連盟、関西合気道連盟が結成され、10月には全国合気道連盟が発足しています。大学の合気道の普及はめざましいものでした。

 大学生は卒業後仕事の為全国に散ります。数多くの卒業生の中の何名かは、卒業後も合気道を続けたいと思う者もいます。勿論合気道など稽古している場所もありません。そこで自分たちで同行の士を集め、体育館や町の道場を借用して、各地で稽古が始まりました。自宅に道場を建てる人も出てきました。又海外に合気道の普及を目指す人もいました。(合気道小林道場関係ではドイツの浅井勝昭師範、ブラジルの鹿内一民師範)

 私は大学卒業後、本部道場の指導部員として合気道の修行に専念しました。防衛庁、NHK、当時まだ数少ない各支部の道場や明治大学、学習院大学を指導しながら埼玉大学、東洋大学の合気道部設立に努力しました。

 合気道小林道場の設立は1969年4月です。今まで稽古した仲間、大学合気道部のOBの皆さんの援助のもと、自宅の駐車場に建設出来ました。それから27年、合気道小林道場も国内、海外の傘下道場を含めれば百カ所以上の道場に増えています。

 植芝吉祥丸道主の「まず学生の中にしっかり根を下ろし、その学生が社会人になっても合気道を続けてもらおう。やがて、そうした人達が、社会に出て、活躍してくれるようになれば、合気道は盤石となるはずです。」と云われた先見の明に感心させられます。

 そればかりでなく、現在では合気道小林道場にもお父さん、お母さんが大学で合気道を稽古していたという子供達も沢山稽古に来ています。このように、世代や人種を越え合気道の環が益々広がっていくのが感じられます。


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